collection of short stories
- 過去作品のLiner Notesより -
4: nuigurumi / 縫包
遊び疲れた”縫包”。
そんなにまっ黒くなるまで、
これまでいったいどれ程の人間を
映してきたのだろう。
“縫包”さん、
なにを見てきたの?
笑ってるの?
教えて欲しいんだ、
その記憶を。
教えてくれたらさ、
代わりにこれをあげるよ。
綺麗でしょ?
この”風車”。
3: akiraka / 晶
「もしかしたらの話、
太陽の隣に寝転んだ太陽がもう一つあって、
その後ろにはブルーベリー色をした
小さな惑星が三つ、
最後にはなんと、
もっと小さな鉄の惑星が一つ。
そんな太陽系がどこかに
存在するかもしれないね」
こんなくだらない事を
大真面目に話す大人が、
今でも、もっと沢山いたのなら、
世の中は光輝く笑顔で
溢れていたのかもしれない。
くだらない大人のくだらない想像なんか
どうでもいいと、
“縫包”を抱いた子供はなにか喋っている。
まるでぬいぐるみが
もう一人の自分を演じるように。
2: mabuta / 瞼
どこかの国の古びたアパートで、
名もなき画家が描く抽象画。
暖色を重ねて表現したのは、
二つの瞼とそのまつ毛。
目に見えていたはずのものが消えたのは、
目に見えない場所へと向かったから。
だから彼は瞼を描いて、瞼を閉じる。
そこでは、
”晶”な優しさで包み込んでくれるのだ。
1: rinkaku / 輪郭
削ぎ落とされた輪郭。
重なり合う、
もう一つの輪郭。
その隙間、
こぼれ落ちる果実の粒と、
滴る果汁。
溢れでてしまう
内なるなにかを留めている輪郭。
その輪郭は
それぞれ様々な在り方で。
削ぐことなく、
ぼやけるほどに、
“瞼”を閉じて、
感じるままに。